憲法学者の道から
在宅医療コンサルタントに

2019.08.31.UP
波村 美絵
【1976年・沖縄県出身】
Writer Profile
高田 滋吉

Written by

Shigeyoshi Takata

Photographer Profile
波村 美絵

Photograph by

Mie Namimura

仕組みありきじゃなく人ありき

波村さんは総務業務の経験を経て、在宅医療クリニックの「事務長」になった。求められる役割は、医者やスタッフ皆にとっての働きやすい環境づくり・業務効率化など、組織の生産性向上に関わる全てだった。

生産性向上のカギを握る一要素は、院長と現場スタッフのコミュニケーション。だが一般企業以上に医療機関では、トップに意見を言えるスタッフは多くない。なぜなら医療機関の院長には、経営者&医者という二重の権威があるからだ。そこを怖れず意見するのは、スタッフにとって簡単ではない。



でも現場課題は、言わないと改善しない。
もやもやを、心に閉じ込めたら良くない。

波村さんは権威を怖れず、意見を発信できた。もともと学術分野で論理力を磨いてきたからかも知れない。或いは小学6年にして教師を問い質した頃から、それ以前に14回もの転居の度に自己紹介を求められた幼少期から、発信力を培ってきたのかも知れない。

だから私が院長にもスタッフにも
意見を言う、嫌われ役でした(笑)

でも、一人でも多くの患者さんを助けたいという最終目的は、院長もスタッフも必ず一致できる。それが、医療業界で働く人達なんです。



例えば、波村さんが取り組んだ課題。入社当時、外勤スタッフが在宅医療から帰社後に、翌日の医療用具を準備していた。毎日22時頃まで、遅いと深夜2時までかかる日もあった。改善すべき課題と感じた波村さんは、定時で帰宅する内勤スタッフ達に手伝って欲しいと呼びかけた。

当初は、反発もありました。
効率性だけ訴えても、人の心は動かない。
だから、一人ひとりの気持ちを聴きました。

目的は、患者さんが安心して医療を受けられること。その為に、スタッフ皆が笑顔で働ける環境を創ろうと。一人ひとりの気持ちが徐々に一致した結果、現場も内勤も皆が定時に帰れる協力体制に変わった。さらには、スタッフ全員が有給休暇を100%取得できる職場にまで変わっていった。



変化は衝突を産むけど、新たな共感も生む。
論理じゃなく共感で、人の心は響き合える。

波村さんはこのプロジェクト前後から、再び絵を描き始めた。仕組み以上に、人の心ありき。波村さんはそのことを、医療業界で働く人達から教えてもらった。



2018年7月、波村さんは在宅医療コンサルタントとして独立した。起業家がまだ少ない在宅医療業界における先駆者の一人。自分独りでは決断できなかった。

一緒に学び合ってきた、事務長の皆さん。
医療業界で仲間になってくれた皆さんの
共感と応援で、私の心も動き出しました。

波村 美絵  Namimura Mie
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